ブレーキに関する知識

ブレーキに関する知識/ブレーキ鳴きについて

ブレーキ鳴きについて

ブレーキパッド交換後、しばしば発生するブレーキ鳴き。そして、それは比較的よく知られたトラブルですが、原因や対策方法について意外によく知られておりません。 また、調べようにもブレーキ鳴きに関する文献もほとんどなく、八方塞りな状態だと思います。ここでは、多くの方にブレーキ鳴きに関しての知識を深めて頂くためにブレーキ鳴きに関するメカニズム、原因、ブレーキ鳴きが発生した時の対処方法、チェックガイドを紹介したいと思います。

ブレーキ鳴きが発生するメカニズム

ブレーキング動作により、パッドとローターが触れたことによる接触振動(振動=固有周波=音)が、ローター本体により増幅され、音となったものである。(ローターそのものがスピーカーの役割を果たし、音が大きくなる) ブレーキ鳴きを図解説明すると以下のようになる。

ブレーキをかけるとパッドがピストンに押され、ローターに接触。力強く、均一な圧力が得られればいいが、現実にはうまくいかず振動が発生する(ビビリ)。このビビリがローターにより音に変換される。ひどい場合はこのビビリが、キャリパーやサスペンション、車体にまで伝わり大きく、かつ多種多様な音になる。

このビビリは
1.パッドの素材の柔らかさ(減衰特性)により吸収する
2.ローターの柔らかさ(減衰特性)により吸収する
3.パッドの裏板とピストンの間のシムにより吸収する
吸収がうまくいかなければ → 大きく、不快な音になる(クレーム)

ブレーキ鳴きはパッドとローターが接触して初めて発生するものであるため、パッドやローターだけを疑って考えがちですが、それは短絡的な考え方です。パッドやローターは鳴きを発生させてはいるが、そのような状況を作り出している本当の原因を見つけることが最も重要であります。
ブレーキ鳴きについてのケーススタディ(1)

ブレーキ鳴きについて

ケース 1

ローターは中古のまま、パッドだけを新品に入れ替えた。その直後から鳴きが発生するようになった。パッドを交換して鳴きが発生したのだから、原因はきっとパッドであろう。しかし、パッドを見ても異常なところはない。他に鳴きに関して考えられる原因を色々と調べるが、よく判らない。 ただ、ローターを良く見ると、ローターのエッジ(赤で囲んだ部分)が立っているのが気になった。

ケース 2

ローターは中古のまま、パッドだけを新品に入れ替えた。その直後から鳴きが発生するようになった。パッドを交換して鳴きが発生したのだから、原因はきっとパッドであろう。しかし、パッドを見ても異常なところはない。他に鳴きに関して考えられる原因を色々と調べるが、よく判らない。ただ、よくローターを見るとローター表面には以前に使用していたパッドの摩擦材が付着しており、そのうえ段差も出来ていた。

ブレーキ鳴きについて

結 論

まず、「ケース 1」の場合ですが、新品のパッドは凸凹がなく、摩擦材表面は真っ平らです。そして、それをエッジの立った中古ローターを組合せて使用すると、エッジの部分(赤で囲んだ部分)しか当たらず爪で引っかいたような擦れ方になり、鳴きを発生させます。もちろん、ローターのごく一部分しか当っていないため効きも非常に悪いので注意が必要です。

次に「ケース 2」の場合ですが、まずローター表面に摩擦材が付着したままだと、その部分だけ余計に引っ掛かるようになり、鳴きを発生させます。また、段差があるとパッドとローターがきっちりと密着できなくなるため振動が発生し、鳴きとなります。

なお、「ケース 1」も「ケース 2」の場合もパッド交換ではなく、ローターを研磨あるいは交換をすると鳴きはほぼ収まるでしょう。

『交換した部品はパッドだけだからパッドが原因じゃないの?』とか『今まで鳴きが発生していなかったのだからパッド以外に原因はないでしょう?』と言う声が聞こえてきそうですが、これらの場合、パッドの可能性は非常に低いです。確かに今まで使ってきたパッドとローターの組合せでは鳴きは発生しておりませんでしたが、それは長い年月を掛けてパッドとローターがお互いに、それぞれの凸凹な部分に歯車を合わせる様に馴染んでいたからです。そこに新品の凸凹のないパッドが組み合わさったら・・・・。 簡単に想像がつきます。

ブレーキ鳴きについてのケーススタディ(2)

続いてブレーキ鳴きに深く関係しているパーツであるキャリパーピストンについてもご説明させて頂きます。キャリパーピストンはブレーキ鳴きだけでなく、ブレーキトラブルに深く関係している部品でありながら、疑われずに素通りされるケースがほとんどです。 まず、キャリパーピストンの図をよく見て下さい。

キャリパーピストン図のようにキャリパーピストンはピストンシールによってシリンダーボデイに保持されております。そして、このピストンシールの弾性によってブレーキを離した時にパッドが引き戻されるわけですが、このシールの弾力がなくなってくるとパッドとローターの離れが悪くなり、引きずりを発生させます。 また、それだけでなく、振動吸収性も悪くなり、パッド振動をキャリパー本体に伝えやすくなり、鳴きを助長させます。 ピストンシールやダストブーツが重要な部品であること、そしてそれらが劣化すると様々な弊害を招くことを理解して頂けたと思いますが、ほとんどの方が交換した記憶がないと思います。 一般的には走行100,000kmごとに1回交換する必要があると言われますが、お住まいの地域や走行スタイルによっても異なってきます。激しく走る方はもっと交換サイクルが早くなりますし、サーキット走行される方は走行会5回ぐらいに1回の割合で交換するのがベストです。 1度もシール(ブーツ)交換したことがなく、走行距離が伸びている方でブレーキ鳴き等の不具合が発生している方は交換をおすすめ致します。症状が収まる可能性が非常に高いです。

まさかこのような所までブレーキ鳴きの原因があるのかと驚かれる方もいらっしゃると思いますが、この劣化した部品をご覧頂けると納得して頂けると思います。交換した部品を鳴きの原因として疑うことは決して間違いではございませんし、一般的なことだと思いますが、交換した部品のみを疑うことは非常に短絡的なことです。 交換した部品を調べるのと同時に交換していない周辺部品も異常がないかどうか、劣化している部品がないかどうかを調べてみるのがブレーキ鳴きを解決する一番の近道ではないかと思います。

ブレーキ鳴きが発生した時には・・・

ブレーキ鳴きは様々な要因が複合的に絡んで発生しているケースが多く、また様々な要因が考えられますので以下のような要領で出来るだけ多くの情報を収集頂けますよう宜しくお願い致します。

  • ◆車種 ◆パッド/ローター品番 ◆装着時期、装着後の走行距離、総走行距離
  • ◆音の種類(キー、グー、ギュル、ゴー、ゴトッなど)
  • ◆発生状況(低速時 or 高速時、停止寸前 / 温間時 or 冷間時 / 雨の日、冬の朝一番など)
  • ◆ローターについて(新品 or 以前から使用している中古)
  • ◆ローターの状態(摩擦材の溶着や段減りなど) ◆パッドの状態(残量、片減り、表面劣化など)
  • ◆キャリパーピストンの状態(ピストンシールやダストシール交換済みかどうかか)
  • ◆鳴き対策について(既に対策されているなら、その時期、方法、効果の有無など)
ブレーキ鳴きトラブルチェックガイド
不具合
発生時期
音の
種類
予想される原因 対処方法
パッド交換直後 キー パッドとローターが馴染んでいない、あるいは鳴き対策が不十分 そのまま走行距離を重ねてみる
効果がなければパッドの面取り加工、鳴き止めシムの貼付、グリスの塗布(特にキャリパーのパッドリテーナ部分)
組付け不良 正しく取付がされているかどうかを確認
特に国産車の場合、純正の金属製シムが取付けられているかどうかを確認、取付ていなければ取付
ローター表面に直前に使用していたパッドの摩擦材が溶着、あるいは段減りしている(中古ローターの場合) ローター研磨あるいはローター交換
ゴー ローター表面に直前に使用していたパッドの摩擦材が溶着、あるいは段減りしている(中古ローターの場合) ローター研磨あるいはローター交換
パッド交換を
行なってから
暫く経った後
キー 鳴き対策部品の効果の減少、劣化 パッドグリスの再塗布、鳴き止めシムの交換、パッドの再面取りその他関連パーツの再交換
パッドの劣化及びローター表面に摩擦材が溶着 表面が軽く劣化している場合はペーパーがけで対応
使用限度を超えているものや片減りの場合は新品交換
ローター研磨あるいはローター交換
ローター表面に摩擦材が溶着、あるいは摩擦材表面の変質 パッドやローター表面のペーパーがけ及び研磨
ゴー スライドピンの固着 スライドピンの点検及び注油
パッド交換時期
に関係なく
キー キャリパーピストンのシールの劣化 ダストシール及びピストンシールの交換(特に走行距離70,000km、新車登録後5年経過の車は要注意)
ゴー ローター表面に摩擦材が溶着、あるいは摩擦材表面の変質 パッドやローター表面のペーパーがけ及び研磨
ゴトッ、
パタッ
パッドとトルクメンバーの隙間の拡大に伴い制動時にパッドが移動し、トルク受部に衝突する為(停止後のバック走行時に多い) リーディング側にパッドを押付けている鳴き防止用金具、スプリング等の交換

※こちらのトラブルチェックガイドはあくまでも街中及び高速道路、峠を一般的な速度で走行されているという想定のもとに作成したものです。
サーキットでの走行、あるいはそれに準じるような状況での走行(高速道路等でのハイスピードからのブレーキの繰り返し)の場合、
不具合発生時期を初めこちらのガイドに当てはまらないことがあることを予めご了承下さい。

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